Book Review

『大正歌壇史私稿』 来嶋靖生 

 一気に読んでしまった。凄い本がでたものだ。地味な題名に騙されてはいけない。大正歌壇の濃密さは現歌壇の比ではない。その波乱万丈なスペクタクルを来嶋靖生は概観してみせる。節、赤彦、茂吉、白秋、牧水、空穂、夕暮、晶子、迢空、善麿、文明他、書中に出てくる綺羅星のような歌人群を、まるで天井桟敷に座って、リアルタイムでその進行を観ている気持ちにさせてくれる。
 著者の明快な方法論にそって編年体で構成されている。中でも大正十二年の関東大震災に際しての歌人達の歌を「これらの歌の迫力は近代短歌半世紀の到達点をしめすといってよい。」と書き、詳細に採り上げている。当時の結社流派により、こうも優劣があるものかと、平成のぼくらの目からは見える。
 歌誌から歌集に纏める迄に、大正歌人がいかに厳しく推敲に心を砕いたか、厳選したか、その実例を豊富に掲載して、まことに示唆に富む。また歌壇の論争史にも触れ、歌人の恋愛、離合集散にも触れている。

(ゆまに書房 〒101-0047 東京都千代田区内神田二-七-六 電話03-5296-0491 定価2500円<税別>)     
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by Achitetsu | 2008-09-03 16:46 | 歌集評
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